その16 '06年11月
★母のこと
9月に終わったNHKの連続ドラマ『純情きらり』、主人公二人の状況が、父の遺文に書かれていた父母の姿に似通うところがあって、今までになく毎朝見続けました。味噌屋と餡屋の違いはありますが、商売を切り盛りする勝気な妻とおとなしい夫は、父が書いていた祖母と祖父の姿とそっくりで、跡継ぎ息子が商売以外のこと(ドラマでは音楽、父は文学・哲学・宗教)に惹かれたことや、戦時中、材料の豆の統制に四苦八苦したことも似ています。ドラマの主人公は、婚約者が出征し未来の姑と帰りを待ちますが、母は十代で結婚して8ヶ月ほどで父が出征し、姑や小姑たちと暮しながら帰りを待っていました。あの時代、似た状況の人は多かったことでしょう。
母は、父の遺文を活字で読み直したのをきっかけに、父の何十年にもわたる日記を抜粋してまとめ始めました。二人がお見合いし結婚した頃からのもので、抜粋してもノート10冊を超える分量になるとのこと。母は書き写しながら、忘れていた昔のことを思い出したり、父の言葉を心外に思ったりなどする度に私に涙声で電話してきます。その内に、これも活字にしてくれないかと切り出しましたが、母のきれいな字で書かれている方がいいからと、順次預かって読んで行きながら誤字の訂正だけ引き受けることにしました。淡々と簡略に記されていますが、ひとに読まれることを全く想定しないその時その時のなまの記述は、私たちに伝えるために半生をまとめた遺文とはまた違って、当時の父母の姿や心情に直接目を向けさせ、こうした諸々の出来事があったから私が生を得たのだという実感を感じさせてくれます。私の生まれてからのこともいろいろ書いてあり、記憶にあることもないことも大きなことも些細なこともすべて興味深く貴重です。そして今、母と私が数々の思い出を共有し、過去のお互いの行き違いなどに関してもさらりと自然に語り合えることは、この上なくうれしいことです。
8月の末に、母が以前から行きたがっていた北海道にいっしょに行きました。次男がレンタカーを運転し、親子3代での旅行となりました。旭川・札幌・小樽の順に宿泊し、旭山動物園を観、美瑛や富良野も巡り、札幌ドームで日本ハムの試合も観戦し、小樽の朝里川温泉にも行きました。小樽では、7年くらい前に夫と二人で行ったところを何ヶ所か懐かしい思いで訪ねました。旅行中、息子と私とそれぞれ写真をずいぶん撮りましたが、上の写真は私が美瑛で撮ったものです(母本人には内緒で掲載)。
母は現在大阪に住んでいますが、60歳くらいからパッチワークを始め、83歳の今も、大作を幾つも作っています。また、ナンクロとかいうクイズに凝って何度も雑誌1冊の全問正解をクリアーしたりと、たいへん達者なものです。でもひとり暮らしが心細いらしく、私に時々は帰って来いと言います。先月末、北海道旅行からそろそろ2ヶ月経つのでまた行ってきました。毎回一緒にワインを1本空けること、映画に行くことなどが恒例となりましたが、今回は『フラガール』を観て、母は大感激でした。また今回は、母は父の日記がきっかけで古いものの整理をしていたようで、83年前の母の赤ちゃんの時の写真や、当時の親族達の園遊会の8ミリビデオや、90年前の祖母の嫁入り行列や道具などの写真等々、珍しいものを幾つも見せてくれました。母親というよりも世代の違う友人との不思議な付き合いは2ヶ月に1度の私の楽しみです。
さて私自身のことですが、最近ちょっとした好奇心から、近所のスポーツ・クラブのスタジオ・プログラムを各種試みてみました。ダンス系の楽しさには結構惹かれましたし、スタジオに毎日長時間参加している同世代の女性達のパワーには圧倒されました。毎日がお祭のような世界です。ヨガの人気にも驚きましたが、クラシックなハタ・ヨーガのさわり部分とアメリカナイズされたヨガが混在しているようで、今のヨガ・ブームの底が知れた気がしました。また、このように発散させるエネルギーを創造的あるいは精神的なことやボランティア活動などに向けたらいいのにとも思いました。太極拳など、長い歴史をもつメソッドには大いに関心を持ちましたが、やはり「広く浅く」はノイズが増えるだけに感じられ、3ヶ月ほどで早くも本来の出不精に戻りました。放送大学を再開したのも、家でひとりでいる時間をより豊かにしたいと思ったそんなタイミングだった訳で、昔学んだフランス語などサンスクリット語以外の語学や、インドやヨーガ関連以外の諸文化の勉強をしたくなりました。長く続けたいので再び全科履修生(今回は「生活と福祉」の分野)となり、先月から放送授業を受講し始めました。脳ミソの老化を裏ワザで補なおうと、以前はビデオとテープだった学習方法を変え、パソコンで録画しエンコードして音声をデジタル・オーディオ・プレーヤーに入れて聞いています。数年の間になんと便利になったことでしょう。勉強の合間にこのHPのほかのページの更新にもそろそろ取り組みましょうか…、でもやはりまた気長に待っててくださいね。
ミーナークシー(ヨーガあざな)