猿のポーズ
第8回
 ハヌマトは、古代インドの2大叙事詩の1つ『ラーマーヤナ』に登場します。身体の大きさを自由に変える、空を飛ぶなどの神通力を持ち、無双の怪力と無私の忠誠心をもって主人公ラーマを助ける半獣神。敵の住むランカー島(今のスリランカ?)に、ラーマ軍は猿たちが石や木を集めて洋上に作った架け橋を渡り、ハヌマトは大きくジャンプして渡って乗り込みます。犬、猿、雉を連れて鬼が島に鬼退治に行く桃太郎伝説を思わせる話です。
 ラーマの兄弟ラクシュマナの生命を救うために、薬草の生えているカイラーサ山の山頂を丸ごと削り取って運んだという逸話も有名で、山を担いで宙を飛ぶ姿は大衆宗教画に好んで描かれ、中国の孫悟空の如く民衆に愛されます。
 すなわち、前後開脚のアーサナの形は、一跨ぎに空を飛ぶ姿を象徴したもの!
 ハヌマトの主人ラーマはヴィシュヌ神のアヴァターラ(化身)の一つとされますが、太陽神ヴィシュヌはハヌマト以上にコンパスが長く、世界を三歩で闊歩するといわれます。
 そんな壮大なイメージを持ちつつ取り組みたいものですが、神ならぬ身としては、無理をせず、小さな一歩を重ねていくことにしましょう。

 
●<アンジャナー・アーサナ>の連続形
@
<金剛坐>ヴァジュラ・アーサナから腰を上げ、両手を前の床に着いて<猫のポーズ>になります。
A左足を両手の間に踏み出します。
B腰と右腿とを前に押し出して、左脚を二つ折りにし、骨盤を左足首に近づけます。腰を更に下げ、両手を両耳を挟むようにして上げて頭を後ろに反らせ、両肩を引いて胸を広げ、背中全体を弓なりに反らせます。
C Aを経て、右膝を曲げ腰をゆっくり後ろに引いて、右足の上に座った形で、上体を左脚の上に前屈させます。
D Aを経て@の猫に戻ってから、踏み出す脚を替えて同様におこないます。
@
A
B
C
@
A-1
D
←前の脚がきちんと二つ折りにならず、後ろの脚が伸びず、腰が沈みきれていません。股関節と骨盤の可動性、前の足首の柔軟性などがポイントです。足首が曲げにくいと、脚を二つ折りにしたら踵が浮きやすくなり、股関節でつっかかると腰が沈めません。
 問題点を丁寧に確かめつつ練習しましょう。
●<アンジャナー・アーサナ>の変形
←慣れてきたら、後ろの足指を床に着いて膝を浮かしておこないます。
更に、両手を、<ヴァクラ・アーサナ>(<捻じりのポーズ>の回参照)式に回転させて<アンジャナー・アーサナの捻じり>も試みてみましょう。→
←Aで足の踏み出しが足りないと、Bで踵が浮いてしまいます。練習形@の「左膝を直角に、右腿と左脛を垂直に」という位置関係は、連続形Aの「左足を両手の間に」という位置関係と同義です。
B
<ハヌマン・アーサナ>は、ずばり、前後開脚のポーズです。<アンジャナー・アーサナ>では二つ折りにしていた前の脚を、真っ直ぐに伸ばします。急に無理をしておこなうと、脚の筋などを傷めることがありますので、徐々に慣らすようにゆっくりと練習していきましょう。
C
A-2
<破壊神のポーズ>
<前後開脚の捻じり>
<仰向けハヌマン>
仰向けから、片脚を上に上げて両手で頭のほうに引き寄せます。残した脚は膝を曲げておいて、徐々に伸ばしていくと負担なくおこなえます。
<鷺のポーズ>
前に伸ばす脚の練習になります。
<燕のポーズ>
後ろの脚の練習になります。
<ハヌマン・アーサナ>の練習形
3種類ご紹介しますので、お試しください。
メインページに
●<ハヌマン>の一歩先のポーズ
<ハヌマン>の一歩前のポーズ
<うつ伏せハヌマン>
うつ伏せから、片脚を床を滑らせて横に開いていき、手で引き寄せて、顔に近づけます。意外に楽な方法!
<猫ハヌマン>
<猫のポーズ>から、片膝を浮かせて胸元に引き寄せて、両手よりずっと前の床に、足を踏み出します。
<ハヌマン・アーサナ>の連続形
@<金剛坐>ヴァジュラ・アーサナから腰を上げ、両手を前の床に着いて<猫のポーズ>になります。
A 左足を両手の間に踏み出し、右脚も後ろに滑らせて、両手で腰から上の体重を支えつつ、両脚を前後に開いていきます。
B一直線を目指して両脚を伸ばしつつ、腰を沈めていきます。
C坐骨が完全に床に着いて、上体が垂直に保てるようになったら、両手を前から平行に上げていきます。
D両手を両耳を挟むようにして上げて頭を後ろに反らせ、両肩を引いて胸を広げ、背中全体を弓なりに反らせます。

@
A
B
C
D
前後開脚の要素をもつほかのポーズを形だけご紹介します。難易度で、ハヌマンより前か後かを分けました。
逆順で戻すのが普通の方法ですが、床に置いた両手で支えつつ、一方の脚を横から大きく回して、うつ伏せか長座になってもいいでしょう。
まずは、母猿のポーズから。

●<アンジャナー・アーサナ>の練習形


@<金剛坐>ヴァジュラ・アーサナから腰を上げ、左脚を前に踏み出します。(左膝を直角に、右腿と左脛を垂直に。)
A左足の両側に床に両手を肩幅でつきます。
B右脚を後ろに少し引きます。両手と上体と左脛は同じ位置を保ったままで。(これは、後ろの右腿と骨盤の慣らしのため。)
C腰と右腿とを前に押し出して、左脚を二つ折りにし、骨盤を左足首に近づけます。(Bで右脚を引き過ぎていると、左脚が折れません。右膝の位置を少し前に滑らせて調整しましょう。)
腰全体の重みを左足の踵に乗せて上体を垂直に保ち、胸を張り顔を起こします。
D以上の過程を充分にマスターできたら、腰を更に下げ、両肩を引いて胸を広げ、頭を後ろに反らせ、背中全体を弓なりに反らせます。

 順序を遡って<金剛坐>に戻り、脚を替えて同様に。
 今回は干支に因んで猿のポーズです。2回遅れの更新となりましたが、あしからず。
 猿のポーズすなわち<ハヌマン・アーサナ>と<アンジャナー・アーサナ>が今回のテーマで、ともに前後開脚の要素が中心のポーズです。
 <ハヌマン・アーサナ>は猿の王ハヌマトの名を冠したアーサナ。ハヌマトは風の神ヴァーユと猿アンジャナーのあいだに生まれた息子。<アンジャナー・アーサナ>はその母猿のポーズ(<スーリヤ・ナマスカーラ>および<太陽と月の礼拝>にも含まれています)。