第12回三角のポーズ



多くのアーサナは、動物、植物、天体などの自然物の名で呼ばれています。習熟していくにつれ、アーサナの名称は、形態的類似だけではなく、性情やエネルギーなどを含めた深い意味で、それぞれのアーサナの特性を現しているということが理解されてきます。<捻じりのポーズ>の原名に冠されたマツェーンドラなどのインドの聖者の名は私たちにはあまり馴染みがありませんが、そこに込められた特別の意味は、知識によらずとも体感によって直接に伝えられるように思えます。

今回取り上げるのは、幾何学的な形を名称とする<三角のポーズ>原名トリコーナ・アーサナです。三角形・四角形・点(ビンドゥ)そして円(チャクラ)は、原初的なエネルギーや至高の神秘性を象徴するものとされ、ヤントラやマンダラという視覚化による瞑想の道具によく用いられてきました。<ゴームカ・アーサナ>の回で触れたシヴァ・リンガムは男性のシンボルと女性のシンボルを具象的な形で表したものでしたが、男性の象徴である上向きの三角形と、女性の象徴である下向きの三角形を重ね合わせた形はダビデの星と呼ばれるもので、小宇宙の陰陽のエネルギーの統合を象徴し、4つの上向き三角形と5つの下向き三角形とを合わせた形はシュリー・ヤントラと呼ばれるもので、大宇宙の男性原理と女性原理の開転を表します(左図)。兎に角、インドの精神文化の象徴体系は具象化と抽象化の両方向に向かうものだということは、アーサナの名称にも自然物の名に並んで三角形、四角形、円が用いられる所以です。



角張った(?)前置きはさて置いて、本題の<三角のポーズ>に入っていきましょう。


<三角のポーズ>基本形
@脚を大きめに開いて骨盤をしっかりと安定させて立ちます。足先は少し外に向いても結構です。
両腕を左右に一直線に伸ばします。最初のうちは鏡を見るなどして、腕が上りすぎていないか確かめましょう。

Aまず息を吸ってから、吐きながら上体を左側に倒していきます。腕を一直線に保ちつつ頭を回転して視線を徐々に右の手に向けつつ、右腕が垂直になるまで倒します。左手は足首辺りに届けば結構です。

B楽な呼吸で暫時保ってから、息を吸いながら上体を起こしてきます。腕を一直線に保ちつつ視線を徐々に正面に戻しつつ、最初の姿勢に戻ります。
続いて、同様に右側におこないます。

ポーズを保たず、ゆっくりした呼吸に合わせて左右交互に10回くらいおこなっても結構です。
慣れてきたら目を閉じておこなってみましょう。顔の向きは目を開けている時と同じようにします。動きのなかで体の感覚を鋭敏にするためにたいへんいい方法です。







股関節の動きを使って最小限の前傾と捻じりを加えつつ、上体をできるだけ真横に倒すようにしましょう。あごは引いて上の肩に寄せるようにします。
←左は悪い例。股関節でかなり前寄りに上体を倒し、腰から上で捻じりと反りを加えて辻褄を合わせています。また、頭が垂れ下がり、上の腕は上げているつもりが内旋して斜め後ろに引いてしまって肩口が前に出ています。
体の柔軟性だけに頼ると、とかくこのようにまとまりのない形になりがちなので気をつけましょう。







<回転した三角のポーズ>
上体を回転して、捻じりの要素を加えた形です。
@基本形と同じ開始姿勢から、
Aまず、息を吸いながら、上体を起こしたまま右に向いていきます。両腕は一直線のまま右回りに90度水平移動します。
B次に息を吐きながら上体を右脚に向かって倒していきます。両腕は縦に回転し右手は真上に左手は右足首辺りにきます。
C楽な呼吸で暫時保ってから、息を吸いながら上体を起こして右を向いた姿勢に戻し、吐きながら正面に向いて最初の姿勢に戻ります。
続いて反対側を同様におこないます。
手順にAを加えているのは、ちょうど折り紙で袴と舟を作るような感じできちんとおこなうため。



腿にお腹をつけるつもりで上体をできるだけ脚に寄せます。上体を向けきれずに腕だけを上げようとすると、基本形の悪い例と同様、腕を内旋させてしまいます。

←左のように、下の手を足の内側の床か、更には外側の床に置き、両手・両肩を一直線にできればたいへん結構です。


<開脚立ちで回転するポーズ>
両手・両肩を一直線にして捻じり切る練習に最適なポーズです。脚を大きく開いて立ち、正面の床にまず両手を重ねてついてから片手を開いていって真上に上げます。同時に、頭頂から尾骨までが水平に一直線になっていることも大切です。







<伸ばした三角のポーズ>ウッティタ・トリコーナ・アーサナ

基本形から、更に上の腕を体側の延長上に水平に伸ばして体側伸ばしを強めた形です。
下の手を足の後ろの床に置くと更に強い形になります。
基本形の上体の向きを保ち、胸が下向きになってしまわないようにします。
上の腕を頭より上で耳に近い位置で伸ばし、手の先が下がらないよう気をつけます。
視線を巡らせてあごが下になる顔の向きで手の先を見るようにします。
















★このように<三角のポーズ>は、股関節の動きを使って上体を横に倒していくものです。これに比して、<三角のポーズ>の古典的な形は、次のように股関節に頼らずに体を真横に曲げて体側の伸ばしを強調するものです。


<古典的な三角のポーズ>コーナ・アーサナ

3足分の間隔(<三角のポーズ>より少し狭い目)に開いて左右の足を平行にして立ち、両腕は体側に垂らしておきます。
まず残った息を吐きつつ骨盤を左に張り出して頭を右に回転して右肩を見ます。息を吸いつつ上体を右に傾けていきます。
右肩の真下に右手を見下ろしながら、その手を脛の外側まで滑らせていきつつ左肘を曲げて天井の方に高く上げていきます。
肺に息を満たせたまま小さく呼吸しつつ数秒間保ち、吐きながら上体を起こしてきます。同じ要領で反対側をおこないます。



注意することは、前後の傾きをなくし全身を一つの平面上に置くようにしておこなうことです。そのために、肩・手・足を垂直に見下ろすようにします。上の手を少し後ろに引くようにして、肘が後ろに倒れるのを防ぎましょう。胸部と骨盤と肘が一つの平面上にあるという感覚を見つけるために、最初は壁に背中を接して練習するといいでしょう。その時、上の腕を伸ばしたまま横に開いて上げていっても結構です。
戻す時は、下の手の位置を少し上に移動してから、脚を押して肘を伸ばすようにすると楽に起こせます。

←次の段階として左のような形も試みてみましょう。上の完成形から、体をリラックスさせて重力に任せつつ上体を左に回転させて頭を反らせ、同時に上の前腕を右に回転させて顔の前に垂れ下がらせます。下の手は可能な範囲でもう少し下降させてから、指を開いて脛を持つと楽に保つことができます。戻すときは、回転を戻してから、起こしてきます。反対側も同様に。







★以上のように、これらの三角のポーズの系統は、体を横に倒したり曲げたりして、左右の重心移動および体側の伸ばしをおこなうものです。ついでに、同様の要素を含む他のアーサナをご紹介しましょう。

まず、<直角三角形のポーズ>
<猫のポーズ>の回で形だけご紹介しましたが、片膝を直角に曲げて、直角三角形のような形をとって、上側の体側を一直線に伸ばします。このポーズにも回転した形があります。三角のポーズと同じ系統のアーサナととらえていいでしょう。











続いて、左右の重心移動と体側の伸ばしのいずれかの要素がテーマとなるアーサナ群

左右バランスの系統
 体の前面を前に向けたまま、完全に片側の体側を下にする形です。

<半月のポーズ>
広めの脚幅で立ち、片足の爪先を横に向けてその一足分先の床に手をついて後ろの脚を上げ、体の前面を前に向けて頭から上側の脚までを一直線に保ちます。全身が半月すなわち半円の形の平面の中に収まるようにするポーズです。最初は、床につく手を少し後ろよりの位置に置いて練習してみましょう。






<アナンタ・アーサナ>
アナンタは永遠を意味し、7つの頭を持つ蛇の名前です。宇宙の働きが休止している間、ヴィシュヌ神は中空に浮いたこの蛇の体を寝床とし、横臥して瞑想に入ります。
下側の体側が完全に一直線になっていることが大切です。顔は上に向けず、前に向けましょう。
安定したら、目を閉じてみましょう。天空から吊り下げられているような体感が得られたら、もうまるでヴィシュヌ神!。









<梯子のポーズ>ヴァシスタ・アーサナ
ヴァシスタは聖人の名。<アナンタ・アーサナ>と同様の横向きの姿勢から、下の腕を真下に伸ばして体を浮かせ、頭から足先までを一直線にします。更に、手で足先を持って上の脚を真っ直ぐ上に伸ばします。ヴァリエーションとして、上の脚を半蓮華にして後ろから足先を持つ形もあります。













体側伸ばしの系統 体を真横に曲げて上側の体側を伸ばします。


<三日月のポーズ>パールシュヴァ・チャンドラ・アーサナ
<太陽と月の礼拝>のなかにも含まれるポーズです。開始姿勢は<木立のポーズ>の場合と同様に<山のポーズ>で、両脚を揃えておこないます。手順は<太陽と月の礼拝>のページを参照してください。
このポーズでは、左右のバランスが特別の意味で重要です。上体の傾きと反対側の体側の張りとのバランスがとれると、重心は左右いずれにも偏りません。
全身を三日月の形にして上方に伸ばしていくと、生命を養う甘露アムリタが合掌の手を通って中心軸に滴り落ちてくると言われています。
完成形で息を吸った時に確かにそんな体感が得られます。







<かんぬきのポーズ>パリガ・アーサナ
<三角のポーズ>と同様、股関節の動きを使って最小限の前傾と捻じりを加えつつ倒すことになりますが、重心が倒す側に行き過ぎたり腰を後ろに引き過ぎたりしないよう、立てた膝を垂直に両脚を直角三角形の形に保っておこないましょう。




<大地のポーズ>プリティヴィ・アーサナ
プリティヴィは大地を治める女神です。開いた脚が大地。パドマ・アーサナでもおこないます。頭は昇っては沈む太陽や月のようです。基本形では下の肘を脚の後ろの床に置きますが、このように脚の前の床に置いて胸を開くようにすると、少し強い形になります。








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