第11回  亀のポーズ



インド神話で説かれる宇宙は半球形で、象が世界を支え、亀がその象を支え、アナンタ竜がその亀を支えているという左図のような構造になっています。また、その宇宙がどのようにして作られたかを語る創世神話には、ヴィシュヌ神が亀に化身して甲羅でマンダラ山を支えたという話が含まれます。

 また、インド思想全般において、亀が甲羅の中に身を引っ込めることは精神的な意味合いの譬えに用いられ、仏教においては、眼・耳・鼻・舌・身・意の六根が亀の頭尾四足に宛てられます。亀が蔵六とも呼ばれる所以です。

 このように亀は世界を支える土台として、また六根清浄の象徴として尊ばれてきたのですから、ヨーガの<亀のポーズ(クールマ・アーサナ)>も他の動物の名を冠したポーズ以上に深い意味を背負ったポーズであって当然なのです。 









実のところ、<亀のポーズ>は制感(プラティヤーハーラ)のポーズだといわれます。

ヨーガ・スートラ第2章
54 制感とは,諸感覚器官が,それぞれの対象から離れて,心そのままのようになることである。
55 その結果,感覚器官の完全な統御が得られる。

つまり制感とは、サーンキヤ哲学でいう5感覚器官+統覚器官の計6つを完全に自在にコントロールすることで、むやみに感覚を抑えつけたり鈍らせたりすることではないのです。
ですから亀さんのあり方も、じっと耐えながら甲羅で重い物を支えたり甲羅の中に引っ込みっ放しになるというのではなく、甲羅の中に身を引っ込めたり出したりが自由にできるということが「制感」を体現することになるのでしょうか。

<<亀のポーズ>にはこのイラストのようないくつかの形があります。
それらの形を練習しながら亀さんの哲学を検証してみることにいたしましょう。

<<亀のポーズ>基本形
@両脚を60度くらいに開いて立てて座ります。
A上体を前傾させ、、片方ずつ脚の内側から腕を深く差し込みます。

B二の腕に腿を乗せて両腕を横に伸ばし、手のひらを床につきます。


←C-1足裏を前に向けて踵を滑らせて脚を伸ばしていき、脚が腕を押さえ付けるのに合わせて上体を床へと倒していきます。顎が床につき肩口が床に近づけばOKです。
←C-2このように、両手を真横に近い位置で手のひらを下に向けた形が一般的です。ここからあとでご紹介する<亀のバランスのポーズ>にはいれます。
←C-1ではこのように腕を真横より少し後ろよりに置き、手のひらを上に向けています。ここから右の<手組みの亀のポーズ>にはいれます。
腕を内旋させると肩が内側に入り肩甲骨が開き、背中の甲羅がリアルに実感できます。喉の伸びとの拮抗が生まれ、喉の内側がおのずと締まります。この時、両足は亀の前足、両手は亀の後ろ足。地面すれすれの亀の視点も味わいどころです。
<手組みの亀のポーズ>
両手を背中で組んだ形です。C-1から手を組んでもいいですが、Bで手を組んでから脚を伸ばして入るほうが得られるものが大きいでしょう。手の位置はあまり下ではなくウエストの辺りになります。
←<亀のバランスのポーズ>
C-2から両腕を突っ張るようにし、腿を上腕部に乗せて脚をしっかり伸ばし、腰も顔も床から浮かせて、腕だけで体を支えバランスをとります。
←<スプタ・クールマ・アーサナ>
基本形から頭を前屈させ両手で両足を後頭部に寄せてから背中で手を組みます。
あるいは、<手組みの亀のポーズ>から両足をにじり寄せてきて交差させます。
<ヨーガニドラー・アーサナ(眠りのポーズ)>→
仰向けで頭の後ろで両足を、腰の後ろで両手を組んだ、<スプタ・クールマ・アーサナ>を上下逆にした形のポーズ。ひっくり返された亀さんのようですが、ヨーギン(ヨーガ行者)の休息のためのポーズだとか…。
仰向けになり片足ずつ頭の後ろに引いて肩を前に出し、両足を交差させ、背中で両手を組みます。
足首を顔の前で交差させてから上半身を脚の間にもぐり込ませ足を頭の後ろに引っ掛ける方法も可能です。
サークルのページに私の実技写真があります。参照ください。)
●準備形とやさしい形
←準備形
片脚は折って体の前に置き、基本形の片側だけをおこないます。もう一方の腕は肘を前の床に置き、顔を横に向けて手に額を乗せるといいでしょう。

<半分の亀のポーズ>→
片腕だけを脚の下にくぐらせ背中で手を組んでおこないます。<手組みの亀のポーズ>の半分の形になります。
<亀の休息のポーズ>
各種のアーサナのあとの休息のために用いられるポーズです。
正坐で額を前の床につき、指先だけかるく合わせた両手をその前の床に置きます。
呼吸による体の動きを感じとりつつしばらく姿勢を保ちます。
<やさしい亀のポーズ>
<バドラ・アーサナ(合蹠)>で足裏を合わせたまま足の位置をできるだけ前方に移し、足先を両手で持ち、上体を前に倒して額を踵の手前の床につけます。もとは<合蹠前屈>のヴァリエーションですが、<スプタ・クールマ・アーサナ>のやさしい形ともなるポーズです。<亀の休息のポーズ>のかわりにおこなってもいいでしょう。
参考ポーズ ◎類似の要素を持つアーサナ

<マーラ・アーサナ(花輪のポーズ)>

両足を揃え膝を開いてしゃがんだ姿勢で、脛の前から脚を抱え、背中で手をつなぎ、額を床につけます。
<悩みのポーズ>
<亀のポーズ>の基本形の開始姿勢から、両腕で外側から脚を抱えて膝の裏から回した手を側頭部に置き、更に指を這わせるようにして後頭部を両手で抱え込みます。<亀のポーズ>のあとにおこなうといいでしょう。
首の後ろや上背部をよく伸ばすので、<鋤のポーズ>の準備にも用いられます。
脚を抱え込むのが難しい場合は、腕を膝の上に乗せて頭を抱えるようにしても結構です。
◎股関節外旋の系統

<弓引きのポーズ>

<四角のポーズ>
<バイラヴァ・アーサナ(破壊神のポーズ)>
<ハヌマン・アーサナ>
の回にもご紹介した、首(頭の後ろ)に片足を掛けるポーズです。 左の<四角のポーズ><弓引きのポーズ>などに習熟してから試みます。
<ヨーガニドラー・アーサナ>の
準備になりますが、無理をすると首や脚を傷めますので、事前に、首の準備体操と片足をお腹、胸、喉、左右の耳、額、頭頂などに引き寄せる運動とをしてからおこないましょう。
前に伸ばした脚の上に前屈する<スカンダ・アーサナ>や、前の脚と腰を浮かせ両手でバランスをとる<チャコーラ・アーサナ>なども同系列です。





沖縄の浜辺で亀になってみました。クリックするとビデオが見られます。
(WMV2M)





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